研究者が「あなたの職業は?」と聞かれたら、「I am a researcher.(私は研究者です)」と答えると思います。
では、いったいどんな時に「I am the researcher.」と「the」を使うのでしょう?
これはある日本人の先生から最近うかがった実話です。
その先生が若いころ外国で学会に参加されたとき、偶然有名な外国の先生方お二人とご一緒に車で会場に行くことになりました。
若い彼は助手席に、年配のお二人は後部座席に。
車が出発すると、後ろのお二人は何とその先生が最近発表した論文の話を始めたのでした。
A先生「この著者を知っている?」
B先生「いや、知らない、まだ若い人みたいだね。」
という話を聞いていた彼は、おもむろに後ろを振り返り、「I am the researcher.」(私がその研究者です)
とおっしゃったとか。いえ、礼儀正しい先生のことですから、ちゃんと車を降りてから丁寧にご挨拶なさったことと思うのですが、「I am the researcher.」というフレーズはまさにそういう場面にこそ、ぴったりなのです。
日本人にとって冠詞は永遠の課題、と言ってもいいかもしれません。
「a」と「the」の違いで、こんなにもニュアンスが違う、という一つの例でした。