2016年9月22日木曜日

緩歩動物のたんぱく質がヒトDNAの放射線耐性を向上させるというお話:Natureより

Tardigrade protein helps human DNA withstand radiation

9月20日付のNature(オンライン)の記事のご紹介です.

Natureの記事を読む

Tardigrade(緩歩動物)はwater bear(クマムシ)とも呼ばれ,ずんぐりとした,けれど,顕微鏡でしか見えないほどのちっちゃな生物です.

記事によれば「芋虫とハダカデバネズミの合いの子のように見える」この微小生物は実はすごい能力を持っていて,真空中や放射線の飛び交う宇宙空間のような極限状態にも耐えることができる.(*注)2016年9月20日付のNature Communicationsに発表されたのは「クマムシ固有のタンパク質がヒト培養細胞の放射線耐性を向上させる」という新発見でした.

Nature Communicationsの論文を読む

.......Kunieda and his colleagues discovered that a protein known as Dsup prevented the animal's DNA from breaking under the stress of radiation and desiccation.

......国枝らは,クマムシのDNAが放射能や乾燥のストレスから切断するのを防いでいるのは,Dsupというタンパク質であることを発見した.

(*注)これについては2007年に興味深い研究が発表されています.2種類の緩歩動物(オニクマムシとRichtersius coronifer)乾眠状態にし,宇宙ステーションのラボで10日間,放射能,真空,低温といった宇宙の極限状態に置いたところ,オニクマムシが3匹生き残ったとの事.また紫外線の波長をフィルター(280nm以下と400nm以上)したところ,宇宙を生き延びたオニクマムシが産んだ卵は宇宙の真空や紫外線といった条件下に置かれなかったオニクマムシの卵と同様に孵化したのでした.

オリジナルの記事を読む