2021年8月30日月曜日

イカの記憶力は年と共に衰えない、という不思議!ー2021年8月20日付けSmartNewsより

今月イギリスの学術誌Proceedings of the Royal Society B:Biological Sciencesに発表された研究によれば、common cuttlefish (モンゴウイカ)の記憶は歳をとっても衰えないことがわかりました。

モンゴウイカの老体も老化現象(筋肉の衰えや食欲の減退など)は示すのですが、記憶力については若者並み。「年とともに記憶が衰えない動物」の最初の報告例になりました。

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体の大きさの割に大きな頭脳をもつイカは無脊椎動物(invertebrate)の中ではもっとも知能が高いとされており、科学者の研究によれば、これまでに、迷路やパズルを解いたり、さらには、目の前のあまりおいしくない食べ物は見送り、我慢することで、後にもっと美味しい食べ物を手に入れるという訓練もできることがわかっていました。

今回の研究で実験に使用されたのは老若含めて24匹のモンゴウイカ。美味しさの異なる餌2種類と白と黒に塗り分けた領域を使った記憶力テストで、老体は若者と同様の記憶力を示しました。

が、その記憶力にも限界があり、死ぬ2、3日前になると記憶力も学習能力も大きく下がるのです。

実は、イカが生殖活動をするのは寿命が尽きる前なのです。そこでこの記憶力の良さはいつ、どこで、だれと交接したかを覚えている(ひいては自分の遺伝子をより広くより遠くまでばらまく)のに役立っているのではないか、と研究者らは考えています。

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2021年8月25日水曜日

ショウジョウバエだって寂しいと食べる量が増え、睡眠時間が減るのですー2021年8月20日付けSmartNewsより

英語のジョークです。

What does the "19" in Covid-19 stand for? The number of pounds you gain when you're lonely in lockdown.

Covid-19(新型コロナは英語ではこう呼ばれている)の19って何を表しているの?ロックダウン中に寂しくて増えてしまったあなたの体重(19ポンドは約8.6kg)

実際、多くの人は孤独になると体重が増え、社会的交流が減ると睡眠時間も減少する傾向があることが知られています。

ところで、このほどNatureに発表された論文によれば、ショウジョウバエも同様に振舞うことがわかったのです。

Drosophila melanogaster(キイロショウジョウバエ)1匹だけ試験管に入れ、1週間隔離したところ、食事と睡眠に変化が生じたのですが、同じ試験管にショウジョウバエを2匹入れた場合にはそのような変化は生じませんでした。

調べてみると、隔離された昆虫の脳細胞(P2ニューロン)変化が生じていました。P2ニューロンは摂食、睡眠挙動に影響を与える作用をもつこともわかってきました。

研究者らは、ショウジョウバエにとって「孤独」が重大なpathological consequences(病理学的帰結)をもつこと、そしてそれは私たち人間にとっても同様であると言います。

臨床志向の研究によれば、Covid-19の隔離予防策のために米国の成人の多くが過去1年で大幅な体重増加と睡眠不足を経験したとされています

この小さなハエは、新型コロナパンデミックの状況下で生きる私たちの振る舞いを模倣しているのかもしれません。私たちの間には生物として何か共通する理由があるのでしょう。

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2021年8月20日金曜日

若者の便を移植すると、脳の若返りを図ることができるのか?いえ、ネズミの話です。ー2021年8月11日付けSmartNewsより

今日お伝えする8月11日付SmartNewsの記事は冒頭の1行が洒落ています。

Scientists may have found a crappy solution to winding back the clock. 

科学者たちは時間を巻き戻すくそみたいな方法を見つけたのかもしれない。

くそみたいな、というのは下品に聞こえますが、英語では日常的に使われているそうで、何よりこの記事の主題はまさに「糞」。

若いネズミの糞(腸内細菌)を年取ったネズミの腸内に移植(つまり糞便移植)したところ、年と共に衰えてきた認知力が回復、つまり脳が若返ったという実験結果がこのほどNature Aging誌報告されたのです。

腸内細菌は消化のみならず免疫システムにおいても重要な役割を果たしていることはすでに知られていましたが、老化との関係についてはあまり明らかになっていませんでした。

研究チームは若いマウスの便をスラリーにし、老齢マウスに週に2回栄養管を通じて与えたところ、8週間後には老齢マウスの腸内には若いマウスと同様にEnterococcus(腸球菌)が増え始めたのでした。

脳内のhippocampus海馬)と呼ばれる、学習や記憶を司る部分にもまた物理的、化学的変化が現れ、若がえってきたのです。

ところで糞便移植は人間でも行われていますが、それはirritable bowel syndrome(過敏性腸症候群)の治療などに限られており、今回の研究結果が即若返りの方法として人体に応用されるかと言うと、すぐには期待できそうもありません。

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2021年8月10日火曜日

発電用の風力タービンを大型化すると、さらに鳥の死亡率は高まるのか?その答えを嗅ぎつけたのはわんちゃん達ー2021年7月29日付けSmartNewsより

画像提供:Pixabay

クリーンエネルギーとして注目されている風力発電は、野生生物にさまざまな悪影響をおよぼしています。中でも風車との衝突事故(バードストライク)が発生する鳥やコウモリはもっとも被害にあっている生物です。

近年これらの発電施設は、さらに多くの電力を求め、大型化が図られて来ました。しかし、風車が大きくなると、さらにバードストライクは増えるのでしょうか?

さて、このほど行われた研究(論文を読む)によると、新型の大きな風車も旧式の小さな風車も、鳥に対する脅威という点からは差がないことがわかりました。

データを収集するにあたり、大活躍したのがconservation dog(自然保護のためにトレーニングされている犬)です。小型の鳥類やコウモリを探し出す能力はなんと人の2.7 ~ 6.4倍。2020年にJournal of Wildlife Managementに発表された論文では、ある調査地において「69回の探索で人がコウモリを1体しか見つけられなかったのに対し、conservation dog は55回の探索で71のコウモリの死体を発見した」とのこと。

SmartNewsの記事は、conservation dogが科学にとって大きな財産である。と締めくくっています。彼らの活躍はマサチューセッツ州でのコロナ汚染、ウィスコンシン州に侵入した泥カタツムリ、アフリカの密猟者、さらには海洋生物研究における鯨の糞、と多岐に渡っているのです。


2021年8月2日月曜日

ラッコが冷たい水の中で体温を維持できるもう一つの理由がわかりました。2021年7月13日付けSmartNewsより

 

ラッコは高い新陳代謝率により冷水中で体温を維持できる
canopic via Flickr under CC BY-NC-ND 2.0)
クジラなど冷たい海で生きる海洋動物には体温を維持するための厚い脂肪(blubber)が備わっているのに比べ、ラッコは小型でほっそりとした体型です。これまで、体温維持の秘密はその毛皮にあると考えられてきました。非常に密集して生えている毛の間に入り込んだ空気が熱を遮断するのです。

ところが、このほどサイエンス誌に発表された論文によれば、ラッコには新陳代謝率を高め、体温を維持するもう一つのワザがあったのでした。

それは筋肉が生み出す熱でした。筋肉といえば、体を動かすのが仕事で、その際熱が生じますが、体を動かさなくても筋肉から熱が生まれることがあり、それがプロトン・リークと呼ばれるミトコンドリアによる呼吸(proton leak respiration)だったのでした。

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