新しい巣で生まれたハヤシクロヤマアリたちは自分たちが拐われてきたことも,そこがアカヤマアリの巣であることにも気づかず,せっせと餌を集め,巣を守ります.
どのような進化の結果,この奴隷狩りが生まれたのかは長い間の謎でしたが,このほど新しい事実が明らかになりました.
15種のヤマアリ属のアリ(Formica)の遺伝情報から,系統樹を作り上げたところ,奴隷狩りをするアリ,奴隷を持たないアリ,そして寄生をするアリの3本の太い枝が見られたのです.寄生をするアリというのは,他のアリの巣に卵を産み,育ててもらう「托卵」を行うアリのことです.
枝の順番が進化の過程を示します.系統樹をたどり,すべてのヤマアリ属の祖先に行き着くと,彼らは奴隷を持ちませんでした.
やがて托卵をするアリが現れ,そこから枝分かれして,奴隷狩りをするアリが現れたのです.托卵は奴隷狩りの前適応(preadaptation)だったのではないかと研究者は考えています.
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