現在5億の人の腸に寄生しているとされる鞭虫(whipworm)は,宿主の微生物を盗み,自らの微生物叢を作り上げて生存しています.
これは免疫寄生虫学者(immunoparasitology)によるマウスを使った研究でわかったことです.鞭虫は卵から孵る時,宿主の微生物叢から微生物を使って自らの微生物叢(宿主のものとは異なる)を新しく作り上げるのですが,この時に必要な微生物をもらえないと鞭虫は死んでしまうのです.
ところで,面白いことに,鞭虫はその後宿主の微生物叢に手を加え,鞭虫の卵が孵るのに不利な環境を作り出します.
これは一見矛盾しているようですが,実は,鞭虫に都合よい腸内環境で,どんどん卵が孵ってしまうと,宿主の免疫機構がそれに気付き,寄生虫を一掃してしまうからなのです.
宿主の免疫機構に気がつかれないよう,あまりたくさんの鞭虫が生まれないように自らコントロールすることで,鞭虫は宿主の体内で生き延びているのです.
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