1986年,スイスの湖の底から燃料を生み出すことのできるバクテリアが発見され,長い間謎に包まれていた生産機構がこのほどついに明らかになりました.
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発見されたバクテリア(Tolumonas auensis)はトルエン(ガソリンに含まれる炭化水素)産生菌でした.しかしこの菌を実験室で培養するのは難しく研究は行き詰っていました.
数年前にこの研究を再開させたのはカリフォルニアの環境微生物学者(environmental microbiologist)ハリー・ベラーでした.何度かの試みの後,行き詰った彼はNatureに論文を投稿した原著者のフリードリッヒ・ジュットナー(Friedrich Jüttner)にコンタクトしたのです.彼の「同じような細菌は君の近くの湖にもいるはずだ」というアドバイスに従い,ジュットナーが調べたところ13km離れた湖や近くの下水処理場からトルエンの痕跡が見つかったのです.
これらのサンプルを解析し,トルエンを産生するたんぱく質(酵素)を発見した彼は,精製した酵素が試験管の中でフェニル酢酸をトルエンに変換することを確認し.Nature Chemical Biologyに研究結果を発表しました.おそらくこの酵素によってスイスで発見されたバクテリア(Tolumonas auensis)はトルエンを作り出していたものと考えられます.
しかし,なぜ,彼らが有毒な炭化水素を産生するのか?という謎はまだ解き明かされていません.競合するバクテリアを撃退するために毒物を用いていたのかもしれません.またトルエンの生成は単細胞のバクテリアにエネルギーを与えていたことでしょう.
現在ベラー博士のチームは培養が容易なトルエン生成生物の工業化に取り組んでいるそうです.
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