2018年1月6日土曜日

科学は人類を救うのか?ウェルズVSオーウェルの討論は今なお続く


75年前,20世紀の文学者2名はまさにこの命題で議論を戦わせたのでした.

タイム・マシンや透明人間など,サイエンス・フィクションの生みの親とも言える,H.Gウェルズが忠実な科学の信奉者だったのに対し,1984年や動物農場で知られるジョージ・オーウェルは科学に懐疑的な眼差しを向けていたのです.

ウェルズは今日SF作家として著名ですが,当時の人々にとっては,進歩的な政治的見解を持ち,科学に大きな期待を寄せる知識人として知られていました.

彼は,飛行機,宇宙旅行,原子爆弾など20世紀の画期的な出来事の数々を予見していました.そして,人類の希望は科学者や技術者によって監視される単一の世界政府の創造にあると考えたのです.彼は人類は宗教や国家主義を一旦脇によけて,科学的に訓練された理性ある専門家たちの力を信じるべきだと主張しました.

このようなウェルズの考えに対しオーウェルは批判的でした.
若者に「いかに厳密に考えるか」ではなく「放射能や星について」もっと教えるべきだという科学教育に関するウェルズの考えは「見当違い」であると「科学とは何か?」で述べたのです.

オーウェルの考える科学教育は物理や化学,生物学といった特定の分野,言い換えると,事実,にフォーカスするのではなく「理性的な,懐疑的なそして実験的な思考をする習慣」を植え付けることにあったのです.

大衆に単なる科学教育を施すのではなく,「歴史や文学や芸術などの分野の教育が科学者たち自身にとってもプラスになる」ことを私たちは忘れてはならない,と彼は考えていたのです.



0 件のコメント:

コメントを投稿