2017年8月21日月曜日

海のスーパー粘着性生物,イガイとは戦わずに共存

ムール貝を始めとするイガイの仲間は,海のスーパー粘着性(sticky)生物です.
 
足糸と呼ばれる細い繊維を何本も出して体を固定し,海中にある,ありとあらゆるものにくっつくので,海水を取り入れるパイプを詰まらせたり,海底に設置した科学機器をダメにしたり.

厄介な状況(sticky situation)が生じます.

イガイは硬い物体があると気づくとすぐに非常に接着力の高い足糸を出して体を固定します.そこで研究者は潤滑剤を入れたポリマーで覆ってしまえば,その物体はイガイに気づかれないのではないか,と考えたのです.

この潤滑剤には有機物を弾く性質があるので,イガイは物体の表面をとらえることができません.

ミドリイガイを使ったテストの結果は大成功.ポリマーを塗った試験片には8週間でたった4個のイガイしか付着しなかったのに比べ,塗らなかった方には118個ものイガイが付着していました.

ビデオを見る

この研究はScience誌に発表されています.

英文アブストラクトを読む

商品化するには,まだいくつかの試験をしないといけないようですが,これは素晴らしい研究だと個人的に感動しています.

というのも,イガイの付着を防ぐにはこれまで殺イガイ剤がいろいろと研究されてきました(私もかつて特許の翻訳をしていたので,本当にたくさんの研究がなされていたことを覚えています).

でも,このポリマーはイガイの付着を防止するだけで,イガイを殺すわけではない.イガイにくっつかれると困るものだけをポリマーで覆えばいいわけですから.

こういう研究がどんどん進むといいですね.

単語リスト

mussel (ムラサキ)イガイ
sticky situation 厄介な状況
bivalve 二枚貝
Asian green mussels ミドリイガイ
byssal thread 足糸

0 件のコメント:

コメントを投稿