多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)とは,脳や脊髄,視神経のあちこちに病巣ができ,様々な神経症状が再発と寛解を繰り返す難病です.
米国のウィスコンシン大学の研究者らは,紫外線の一部に多発性硬化症の症状を軽減する効果があるだろうという仮説を立てました.
これを実験で確かめるために,紫外線照射実験を行う際,一部のマウスには紫外線をブロックする日焼け止めを塗りました.
ところが,日焼け止めを塗ったマウスでは症状がぶり返すだろうという予想に反して,日焼け止めを塗って紫外線を照射したマウスでも30日にわたり,症状が抑えられたのです.
びっくりした研究者たちがさらに調べると,紫外線を照射しなくても,単に日焼け止めを塗っただけでこの効果があったのこと!
そこで色々なブランドの日焼け止めを試したところ,この効果はサリチル酸エステルを含有している日焼け止めだけに見られたのでした.
この作用の背景にどのような機構が存在しているのか,まだ詳細はわかっていないものの,おそらくサリチル酸エステルが有するシクロオキシゲナーゼ阻害作用が関係しているのだろうとのこと.
このことから新しい薬の開発が進むかどうかは別として,引き続き,波長300〜315nmのUVBの持つ作用についての研究は進められる予定です.
(出典:アメリカ化学会発行 C&EN DEGITAL MAGAZINE 7月31日号)
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