1997年に発見されたクロソ(Klotho)タンパク質は,それが減少すると動物が急速に老化することがわかりました.また,遺伝子工学でクロソを増やしたマウスでは30%も寿命が伸びるのです.それ以来,クロソは延命ホルモンとして様々な研究が進められています.
今日ご紹介するのは,老齢マウスにクロソ(タンパク質)を投与したところ,学習,記憶などの脳の機能が回復したというお話です.
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クロソが脳の老化防止および老化に伴う病気の治療に役立つのではないか,という仮説のもとに,行われた実験では,クロソを投与した若いマウス,老齢マウスの両方で記憶や学習に良い影響が見られ,また遺伝子工学でパーキンソン病を発症させたマウスの運動障害にも効果がありました.
クロソタンパク質は巨大なため,血液脳関門を通過できず,直接脳内には入ることができません.ですから,ボディーに投与したクロソが脳内で作用しているということは,この関門を通過し,脳内に入り込める何らかのファクターがあり,それとクロソとが相互作用しているものと考えられます.今後この研究が私たち人間に応用されるためには,このファクター(免疫系に関係したファクターなのか,あるいは別のものなのか)についてさらに明らかにしていくことがとても重要です.
現在の実験では,クロソタンパク質が使われていますが,これは巨大で複雑なため,合成するのは困難です.今後の目標は,クロソのレセプターとして作用する分子を見つけること,そして,レセプターを活性化できるより小さな分子を設計し合成することだそうです.
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