2017年11月27日月曜日

バクテリオファージの話

ファージとは細菌に感染し,それを溶かして増殖するウィルスの総称.

海の中や土の中など,あらゆるところに存在しているこのファージを私たちは1日に最大300億個も腸壁から吸収しているのかもしれないという研究が報告されています.

彼らは私たちの体内でどんな働きをしているのでしょうか?

マウスを使った実験では,癌細胞膜に結合したファージが癌の成長と拡散を防ぐこと,注入したファージが免疫系に作用し,T細胞の増殖と抗体生成を減少させたり,免疫系の移植組織への攻撃を防ぐことなどがわかっています.

私たちの体にファージが流入し続けることで,体内ファージオームが形成され,免疫応答を調節するのかもしれません.

健康な人から取り出した白血球を5種類のファージに接触させると,白血球はインフルエンザ様の症状と炎症とを軽減させる免疫分子を作り出したという研究も報告されています.

これまでファージは真核細胞(*)とは相互作用をしないというのが生物学の基本でしたが,そうでないことは明らかです.ファージ生物学は間口が狭く,奥が深い.

そんなファージですが,臨床に利用されるにはまだまだ時間がかかりそうです.

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(*)真核細胞(eukaryotic cell)は核膜で区分された核を持つ細胞のこと.ヒトの細胞はこちら.一方ファージが攻撃するバクテリアには核膜がない.(原核細胞=prokaryotic cell)



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