2017年11月6日月曜日

悪者だと思っていた一酸化炭素の思いがけない活用法をゾウアザラシが教えてくれる?

ご存知の通り,一酸化炭素は私達にとっては極めて有毒です.

しかし,ゾウアザラシ(elephant seal)が海の底深く潜るには,そんな一酸化炭素が役に立っているという研究が報告されました.


ゾウアザラシは食べ物を求めて水中で1.5時間,1700メートル以上の深さに潜ることができます.


海に潜っている時と実験室で寝ている時のアザラシの血液中の一酸化炭素ガス濃度を調べたところ,いずれもヒトやシャチの10倍という高濃度を示しました.


一酸化炭素が有毒なのは,血液中のヘモグロビンに対する高い親和性を持つため,血液中に取り込まれた一酸化炭素がヘモグロビンと結びついてしまうと,酸素の体内での「運搬速度が低下する」からです.


ゾウアザラシの場合,この「低下」が長い潜水を可能にしているらしいのです.ダイビングの後で調べると,アザラシの血中酸素濃度は予測よりも16%多かったのですが,それは一酸化炭素が酸素の消費速度を「低下させた」おかげなのです.


これまで悪者と思われていた一酸化炭素の研究がマウスにおいて始まり,その効用として抗炎症作用やプログラム細胞死からの保護,細胞の分割と拡散速度の低下などの可能性が示されています.


ゾウアザラシの場合,潜水すると,心拍数を1分間に3拍程度まで減少させますが,これほど少ないと組織のほとんどに血液を供給することはできません.潜水が終わった後に突然回復する血流に
組織が対処できるのはひとえに一酸化炭素の保護作用によるものと考えられるのです.

心臓麻痺や臓器移植でも同様な血流回復が起こることから,今後一酸化炭素を用いて損傷リスクを減らす研究が進むかもしれません.


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