2016年7月14日木曜日

クラークの三法則

今日も「赤外分光30講」のTea Timeから面白いトピックをご紹介します.

アーサー・クラークといえば映画「2001年宇宙の旅」の原作者としてご存知の方も多いと思いますが,そのクラークが定義した「クラークの三法則」という法則があるそうです.

第一法則:高名だが年配の科学者が「それは可能である」といった場合,その主張はほぼ間違いない.また「それは不可能である」といった場合には,その主張はまず間違っている.

第二法則:可能性の限界をはかる唯一の方法は,不可能であるとされることまでやってみることである.

第三法則:十分に発達した科学技術は,魔法と見分けがつかない.

第二法則と第三法則は納得ですね.特に第三法則は,ハリーポッターを読んでいる時にしばしば感じたことでした.

ところで,第一法則の「その主張はまず間違っている」というのが,とても興味深いのですが,これもまた真実だそうです.というのも,19世紀に活躍したフランスの社会学者,哲学者,天文解説者のオーギュスト・コントは生前「天体の化学的組成は,我々地上の人間には永遠に知ることができない」と喝破したそうなのですが,彼の没後わずか2年でこれが覆されました.分光分析法を創始したハイデルベルク大学のブンゼンとキルヒホッフによって,宇宙の彼方の恒星の元素分布が細かくわかるようになったのです.

それでは,ここでちょっと英作文の時間.
上の第一,第二,第三法則を英語で表現すると?


答えはこちら


単語帳

first law :  第一法則
distinguished : 有名な,著名な,高名な
elderly: 年配の
state that ~ : 〜と述べる
probably:  おそらく,多分,十中八九(perhaps や maybeよりも確信度が高い)
discover: 〜であることを知る(悟る)
the possible: 可能性
venture into: 〜をやってみる
a little way: 少し
past them: それを超えて(themはthe limitsを指す)
sufficiently: 十分に
advanced: 進んだ,高い水準に達した
indistinguishable from ~: 〜と区別できない

2016年7月12日火曜日

赤外線の発見

最後の更新からあっという間に1年!

すっかりご無沙汰いたしましたが,先月フランス語の学校を卒業し,宿題に追われた(?!)学生生活にもピリオドを打ちましたので,ブログを再開いたします.

さて,皆さんは 赤外線の存在にいつ誰が気づいたのか,ご存知ですか?

実は天王星の発見者として有名な,ウィリアム・ハーシェル(Sir Frederick william Herschel)が 1800年にプリズムと温度計を使って赤外線を見出したのです.ニュートンにならって太陽光をプリズムで分解したハーシェルは,青よりも黄,黄よりも赤の光の温度が高いこと,そして赤色の外側の暗い場所の温度がさらに高いこと,つまり目には見えないある種の光(赤外線)が存在することに気づいたのでした.

この実験の様子を,カリフォルニア工科大学が簡単な英語と写真で解説しています.

カルテックの記事を読む

” ...Herschel was interested in measuring the amount of heat in each color. To do this he used thermometers with blackened bulbs and measured the temperature of the different colors of the spectrum. He noticed that the temperature increased from the blue to the red part of the spectrum. Then he placed a thermometer just past the red part of the spectrum in a region where there was no visible light and found that the temperature there was even higher. Herschel realized that there must be another type of light which we cannot see in this region. This light was called infrared.”

告白すると,これまで赤外線がどのようにして発見されたのか,全く知りませんでした.
白色光を分解して得られる虹の7色のそれぞれの温度を測定するなんて,着眼点が素晴らしいですね!

このエピソードを知ったきっかけは,3月に発売された「赤外分光30講」(山崎昶 著 朝倉書店).IRスペクトルは私が大学生だった頃(もう40年前のことです!)から今に至るまで,機器分析の重要な手法ですが,実は,私には有機化学の学生実験でIRを使って混合物の分析をするのが本当に大変だった,という苦い思いがあるのです.(;  ;)

今回,山崎先生の「やさしい化学30講」に取り上げられたので,当時を思い出しながら,私も今改めて赤外分光の復習中です.

山崎先生ならではのエピソードや薀蓄の溢れたこのご本.赤外の勉強を始めたばかりの学生さんのみならず,化学に興味のある一般の方や高校の先生方にとってもきっとすごく参考になると思います.書店で見かけたら,是非一度お手にとってご覧ください.