2018年2月28日水曜日

鳥たちは会話も歌で...二重唱,赤ちゃんミソサザイは二週間でこれだけ上手になりました

私たちが言葉で会話するように,鳥たちも歌で会話-2重唱(duet)-をします.

二羽の鳥が交互に歌うわけですね.

その時の間合い.これは長すぎても短すぎてもいけません.

この間合いは生まれつきではなく,小さい頃から少しづつ大人の鳥に学んで身につけていくものだということが最近の研究でわかりました.

上手なデュエットは,まるで1羽の鳥がさえずっているように聞こえます.

それでは,コスタリカの森の中に住む,ゼレドンミソサザイ(canebrake wren)の赤ちゃんが巣の中でさえずるところをお聞きください.

2週間で本当に上達していますね.

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2018年2月27日火曜日

光と音のミックスで,建物や風力タービンに激突する鳥を減らす


これは著者がトルコに出かけた時に撮った写真です.本文とは直接関係ありません

毎年何百万羽もの鳥たちが建物や風力タービンなどの構造物にぶつかり命を落としています.

このような事故を減らすため,音響灯台(acoustic lighthouse)という案が発表されました.

窓に印をつけたり,光を用いるなど,視覚的に鳥に訴えるアイディアはすでに試みられているものの,飛んでいるときに,目がまっすぐ前を向いていない鳥は目の前に盲点となる箇所があるため,これらの視覚的な警告はうまく働かないことも多かったのでした.

そこで,音を使って鳥に警告する,というアイディアが浮上しました.

障害物として,ぶつかっても怪我のないネットを使った実験を行ったところ,まっすぐ飛んでいる16羽のキンカチョウ(zebra finch)にネットの1m手前で大きな音を聞かせると,彼らがスピードダウンする確率は20%も増えました.

音のおかげで,より早くネットの存在に気づくことができたのです.

研究者らは警告のために光とともにサイレンを使えば,建物などに激突する鳥たちの数はずっと減るだろうと述べています.

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2018年2月26日月曜日

マンソン住血吸虫を健康なボランティアの体に接種する!?

住血吸虫は,毎年何百万もの人々が罹患し,そのうち数千人が死亡する寄生虫です.

このほどオランダの研究者らは,マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)を健康なボランティア17人の体内に接種すると発表しました.

その目的は,住血吸虫症のヒトモデルを作り,新薬の開発に拍車をかけること.

研究は寄生虫の産卵を防ぐために行われるので,ボランティアへの危険は非常に少ないとのことですが,この研究終了後のボランティアの人たちの体内から完全に寄生虫が除かれているという保証はないので,危険は無視できないと語る科学者たちもいます.

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2018年2月25日日曜日

危険な匂いを学ぶ能力...蚊のお話

あ,蚊が腕に止まろうとしている,と気づいて慌ててパチン!と打ったものの,逃げられ,悔しい思いをした方もいらっしゃることでしょう.

でもご心配なく.潰し損なった蚊は,今自分を叩き潰そうとしたあなたの匂いを覚えた(!)ので,もうあなたのところには戻ってこないのです.

さて,ネッタイシマカ(Aedes aegypti)を使った研究によれば,蚊には匂いを使った学習能力があること,またそれにドーパミンが関与していることがわかりました.

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2018年2月24日土曜日

バイオ時間データベースの協力者募集中

生物学的多様性(biodiversity)は時とともに変化しており,世界中のエコシステムの具体的な内容は,環境理論による予測を上回るスピードで変化しています.

環境を保存したいなら,生物種の数を数えているだけではダメで,エコシステムにどんな生物種がどれだけ生存しているのか,それが時間とともにどのように変化しているのか追跡しなくてはなりません.

そのために現在作られているのがバイオ時間データベース(BioTIME Database)です.
これは,エコロジカルコミュニティーの情報,動物の数,それらの時間による変化を集積したデータベースですが,オープンアクセスのデーターセットなので,誰でもどこからでも研究や教育,そして自然保護のためにこれを利用することができます.

データを持っている人,このプロジェクトに協力し,何らかの形でこのデータの保存をサポートしてくれる人の参加が求められています.

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2018年2月23日金曜日

蛇のウロコを真似た表皮を持つロボット(ビデオ)

蛇のウロコを真似た皮膚を持つロボットは地面を這って進みます.

伸縮するウロコは切り紙を利用して作られたもの

これを繊維強化空気チューブの周りに巻きつけます

チューブを膨らませたり,しぼませたりすると,ウロコは外に開くのです

このプラスチックのスキンをロボットの頭に固定すると,

摩擦が生じ,ロボットは前に進んでいきます

ウロコがフレキシブルなほど,1収縮で進む距離は長くなり

形が複雑なほど摩擦が大きくなります

コントロール,センサー,そして動力が組み込まれたこのロボットには紐がついておらず,将来は医療や救出の現場などで活躍することが期待されています

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2018年2月22日木曜日

お腹が張るので病院に出かけたところ,体内から手術用スポンジが発見された(日本)

42歳の日本人女性のお話.
腹部の膨張感があり,病院に出かけたところ,体内から手術用のスポンジ2個が発見されました.

彼女は6年前と9年前の2回,帝王切開で出産したほか手術歴はないので,これらのスポンジは帝王切開の時に体内に残されたものと考えられます.

5日間の入院の後女性は無事退院しました.

ところで,患者の体内に手術器具を置き忘れるということは起きてはいけないことですが,2013年の調査によれば18760回の手術で5500回起きたとのこと.

さらに,婦人科の手術ではその他の分野の手術と比較し,この手のリスクが大きいことが指摘されています.2010年に行われた研究では18歳未満の青少年が受けた手術では婦人科の手術を受けた少女の場合,体内に異物を残したまま退院した比率はそのほかの子供たちの4倍に上ったのです.

手術の際,器具のチェックリストを作り,体内に残した器具がないかどうかを確認すればこのようなミスは減ることでしょう.

2018年2月21日水曜日

シロナガスクジラの生態を探る

シロナガスクジラ(Blue Whale)の研究者にとって,彼らが何頭いるのか,どこにいるのか,そして現在何をしているのか,を知るのは実は簡単ではありません.

衛星タグという素晴らしい技術があるものの,クジラに取り付けるのは簡単ではありません.

そこで研究者らはクジラが海中で発する音声を録音して解析するという手段に出ました.

過去10年の記録を解析すると,オスのクジラはメスのクジラよりもおしゃべりだということがわかりました.特に夜におしゃべりが聞こえます.(多分昼は話すより食べる方が重要なのでしょう)

また,未だに目撃されていないシロナガスクジラのセックスに関して,それと関連すると考えられる音声も記録されたのです.

これらの新しい知見は米国オレゴン州のポートランドで開催された2018年の国際海洋学会で発表されました.

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2018年2月20日火曜日

海鳥の羽が教えてくれたこと...回復力が衰えている太平洋

精密機器の発達した現在と違い,昔は,ラッコやホホジロザメ,本マグロといった海に棲む生き物を利用して,海やその中に生きる生物に関する情報を得ていました.彼らの組織(骨,羽,耳垢)に蓄積された化学物質がヒントを与えてくれたのです.

このほど報告された研究では1890年代〜2010年代の130年間にわたる8種類の海鳥について,窒素同位体の比率が分析され,現代の鳥のものと比較されました.

その結果,昔の海鳥は主に魚を食べていたが,現代の鳥は⭕️⭕️を多く(昔の2倍量)食べていることがわかりました.

魚の代わりに⭕️⭕️を食べることに問題はありません.が,⭕️⭕️は大量に採れる時と,少ない時の差が大きいことから,将来鳥たちが空腹に悩む可能性が指摘されています.

ここに浮かび上がってきたのは,太平洋の食物連鎖に関わる生物の多様性がこの130年間で失われてきた図.

その原因は単に気候変動だけではないのです.汚染物質,プラスチックビーズ,栄養源,減少している酸素などの要因により,海の回復力が衰えてきているのです.

さてここで問題です.

上の⭕️⭕️に当てはまる海の生物は何?

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解答 イカ

2018年2月19日月曜日

バイスタンダー効果 ご存知ですか?

もしあなたが心臓発作を起こしたとします.

次のどちらの場合の方が安心ですか?

1)まわりに大勢の人がいる.
2)まわりにほとんど人がいない(一人か二人だけ)

実際は(2)の方がすぐに手当をしてもらえる確率が高いのだそうです.

大勢の人がまわりにいると自分がやらなくても誰かがやってくれるだろうと考え,自分は単なる傍観者(bystander)になってしまう...つまり心臓発作を起こして倒れている人の周りをみんな素通りしていく...これがバイスタンダー効果(bystander effect)です.

自分よりももっとふさわしい人(医者や警察官)がいるだろうと考えたり,周りの人も手助けをしていないのだから,そんなに深刻な事態ではないだろうなどと考えて何もしないのです.

でも被害者が知り合いだったり,あるいは「人を助ける訓練を受けている人」が通りがかった場合は,直接手当をしてもらったり,警察や救急車を呼んでもらえる確率がずっと高まることもわかっています.

バイスタンダー効果とは何か?(ビデオ)を見る

同じことがビジネスの世界でもみられ,ボイス・バイスタンダー効果と名付けられています.自分が言わなくても誰かが言うだろう,と思い,現場での共通の事実がトップマネージメントまで届かなくなるのです.


2018年2月18日日曜日

老大木からはより多くの種が生まれ,芽が出る,というお話

私たち人間は年齢とともに子供の数が減る傾向にありますが,樹木はその逆.

とても古くて大きな樹木からは,若木よりも多くの種が生まれ,芽が出るのです.

ところが世界中で,このような老大木の数は今急速に減少しており,生物の多様性,炭素循環,重要なエコシステムプロセスという観点からこれは憂うべき状況なのです.

さて,私たちにできることは何でしょう?

それではここで質問です.
私たちにできることとして提案されているのは次のうちのどれ?

1)森林の数を制限する.
2)老大木をこれ以上切り倒さない.
3)小さな木にストレスとなるようなことをしない.

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解答 2)の老大木をこれ以上切り倒さない,でした.
そのほかに「もっとたくさんの森林を育てる」「現存する老大木を守る」「老大木にストレスとなるようなことをしない」とも言っていましたね.

2018年2月17日土曜日

スズメダイの子供たちの勉強を妨げるものは...

研究所の中で飼われているスズメダイ(damselfish)の子供たちは,オーストラリアの珊瑚礁に放されると,捕食者(predator)に出会うことになります.そこで,研究者らは,彼らに捕食者について教えることにしました.

やり方はこうです.

スズメダイの子供たちの水槽に捕食者の匂いと怪我をしたスズメダイが発した警報合図を混ぜた海水を加えます.

「いいか,これが捕食者の匂いだ.友達が死んだ.次はお前かもしれない」というメッセージを伝えるためです.

さらに匂いだけでなく,ビニール袋に入れた捕食者もタンクの中におろしてスズメダイたちに見せたのです「これがお前たちの敵だよ」と.

さて重要なのはここからなのですが,このトレーニングをするときに2つの条件を付けました.

1)のどかな珊瑚礁の音を聞かせる
2)うるさいボートのエンジン音を加えた珊瑚礁の音を聞かせる

その結果,1)で学習したスズメダイたちは捕食者を学び,のちに自然の海に放されたときに生き延びる確率が高まった(2/3は生き延びた)のですが,2)のボートの雑音にさらされながら学習したスズメダイたちの生存率は20%,トレーニングを全く受けなかった魚たちと同じだったのです.

ボートの音がストレスとなって魚たちはちゃんと学習できなくなったことが判明したのです.

一つの救いは,音の公害(noise pollution)は地球温暖化などと違って,私たちの手でコントロールができることですね.


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さて,最後のクリストファーの言葉あそび,お分かりになりましたか?






















クリストファーは「So that young fish can learn their lessons. Alone or in schools.」と言っていました.

その意味は「(音の公害をコントロールすることによって)魚の子供たちはしっかり学べる.一人で,あるいはみんなと一緒に.」ということですが,もちろん魚には学校はないので,ここで使われているschoolは魚の群れという意味になります.でも,学校という意味を持つschoolを使ったところが,言葉あそびになっていて面白いですね.


2018年2月16日金曜日

ミイデラゴミムシの研究は日本で行われていた!

昨日のブログでご紹介したビデオは,神戸大学の杉浦真治,佐藤拓哉両氏が2018年2月7日の科学誌「Biology Letters」に発表した研究をもとにSCIENCEが映像化したものでした.

さて,2月13日付のScientific Americanのポッドキャストでもこの研究がさらに詳しく取
り上げられています.

研究者らはミイデラゴミムシ(bombardier beetle)とニホンヒキガエル(Bufo japonica)とナガレヒキガエル(Bufo torrenticola)を森から採取して実験を行いました.

さて,それでは数字のクイズに挑戦してください.

1)捕まえてきたカエルとゴミムシはそれぞれ何匹?

2)ニホンヒキガエルは飲み込んだゴミムシの何%を吐き出した?

3)ナガレヒキガエルは飲み込んだゴミムシの何%を吐き出した?

4)それらのゴミムシが吐き出されたのは飲み込まれてから何分後?

5)この実験で吐き出されたゴミムシは全部で何匹?

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解答

1)それぞれ37匹
2)およそ35%
3)58%
4)早いものは15分以内に吐き出されたが,吐き出されるまでに90分近くかかったものもいた.
5)16匹


さらに詳しくこの研究内容を知りたい方は,下記のリンク先で原著論文を読むことができます.

原著論文(英語)を読む

2018年2月15日木曜日

ミイデラゴミムシが無事カエルの胃袋から生還する(ビデオ)

ミイデラゴミムシ(Pheropsophus jessoensis)は脅威にさらされると熱い化学物質を放出(スプレー)します.

さて,ミイデラゴミムシをニホンヒキガエル(Bufo japonicus)の飼育箱に入れると,カエルはすぐにパクッと食べてしまいました.

でも,研究者の耳にはカエルの中から例のスプレーの音が聞こえたのです.

88分後,カエルはゴミムシを吐き出しましたが,両者とも無傷でした.

SCIENCEのビデオを見る

2018年2月14日水曜日

SCIENTIFIC REPORTS 2017年人気のコンテンツ2本

2月9日に配信されたネーチャーのSCIENTIFIC REPORTS(メールマガジン)に掲載された「昨年人気のコンテンツ」

私の目にまず飛び込んできた記事は,「音楽に対する2種類の強烈な情動反応:鳥肌感と涙感の精神生理学」というもの.

実は,この論文は昨年7月31日に本ブログでご紹介しています.

鳥肌が立つ音楽と涙が溢れる音楽を科学する

ところで,昨年は気がつかなかったもう一つのコンテンツに今日は目を見張りました.

タイトルは「自殺既遂者におけるテロメア長とミトコンドリアDNAコピー数の異常」

心理的にストレスを受けたり,精神疾患にかかるとテロメア(●)は短くなります.
今回,自殺により亡くなった方のテロメアの長さを,健康な人のテロメア長と比べたところ,自殺した方のテロメアは明らかに短くなっていたことがわかりました.そして,この傾向は若い人や女性に顕著に見られたのです.
  • テロメアというのは細胞の染色体の端にあり,細胞分裂すると少しづつ数が減って短くなります.生まれた時におよそ1万5000ほどあったテロメアは35歳でおよそ半分になり,2000以下になると細胞がこれ以上分裂できなくなる「細胞老化」と呼ばれる状態になります.テロメアが減ると新たな細胞ができなくなるため,テロメアは命の回数券とも呼ばれています.(参考:NHKクローズアップ現代 https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3974/)

また今回の研究では,自殺者において,健康な人で見られる年齢との相関(歳をとるとテロメアが減少する)はあまり見られなかったのでした.

詳しくは,下記のリンクからネイチャーのページをご覧ください.

ちなみに,この論文はオープンアクセスなので,だれでも読むことができます.
原著論文は英語ですが,リンク先にはネイチャーが作成した日本語の要約とやさしい英語の要約も付いています.

日本語の要約/英語のやさしい要約/原著論文(英語)を読む

2018年2月13日火曜日

鋼鉄よりも強く,弾丸にも貫かれない,それはスーパーウッド!

Scientific American 2018年2月7日付の記事によれば,普通の木材をスーパーウッドに変える新しいプロセスが開発されました.

「圧縮(densifying)」することで,木材という,ありふれた,どこにでもある材料が,ビルの建設や防弾チョッキに適したスーパー材料となるのです.

今回 Nature( 2018年2月7日号)に発表された方法は次の2つのステップから構成されています.

1)水酸化ナトリウムと亜硫酸ナトリウムの溶液中で木材をボイルし,木材のセルロースの大半はそのまま残しつつ,リグニンやヘミセルロースを部分的に除去する工程.

2)処理した木材を細胞壁が潰れるまで圧縮し,その状態を保ったまま加熱する工程.

この加圧と加熱により,セルロースナノファイバーが整列し,多数の水素結合で強固に結び付けられるのです.

もう一つのスーパーウッドとして透明な木材を作り出す研究も行われています.

ここでもまずリグニン(材木の茶色っぽい色を作っている物質)の除去を行います.
リグニンを除去した材木に,プレキシガラスなどでおなじみのポリマー,メタクリル酸メチル(MMA)を注入するのです.

Scientific Americanの記事を読む


2018年2月12日月曜日

カーリングストーンはなぜ曲がるの?

2018年冬季オリンピックのカーリングは2月8日から始まっています.

今日はカーリングについてちょっぴり物理学の視点から解説しているビデオをご紹介します.

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ストーンと氷(アイス)の間の摩擦と回転とが組み合わさってストーンは曲がります.

時計回りに回転させながらストーンを投げると,ストーンは右に曲がります.

反時計回りに回転させながらストーンを投げると,ストーンは左に曲がります.

止まっているストーンに別のストーンがまっすぐぶつかると,運動量保存則が働いて,ぶつかったストーンは止まり,止まっていたストーンが動き出します.

アイス表面は完全にツルツルではなく,ペブルと呼ばれる細かいでこぼこがあります.

ブラシで掃く(スウィーピング)のは,氷の表面を溶かし(摩擦を減らし)て,ストーンの動くスピードや距離を変えるためなのです.



2018年2月11日日曜日

あなたは家派?外出派?アメリカでは家派が増えてエネルギー消費が減っている...

最近のテクノロジーの進歩のおかげで,在宅勤務や,映画館に行かずともリビングで最新映画が見られるなど,ライフスタイルに変化が生じてきました.

最近報告された研究によれば,アメリカの人々は以前より家で過ごす時間が増え,その結果,エネルギーの消費が減少しているようです.

2003年と比べると,2012年の1年間に人々が家で過ごした時間は平均で8日分,多かったのでした.

詳しく見ると,2012年には,家以外の場所(職場とか)で過ごした時間が2003年よりも7日分少なく,旅行に出かけた時間が1日分少なかったのでした.

若い人ではこの傾向がさらに強く,18歳から24歳までの若者たちが家で過ごす時間は2003年より2週間も増えていたのです.

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2018年2月10日土曜日

キツツキが木をつつく音には個性がある,というお話.

声を聞けばその人が誰かわかる,私たち人間と同様に,多くの動物も声で仲間を見分けています.

カエル(frog)魚(fish)キツネザル(lemur)ペンギン(penguin)などなど.     

ところで森の中で聞こえるキツツキの木をつつく音(drum roll)を調べたところ,それぞれの個体が区別できることがわかりました.

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調査されたのは,ポーランドの森に住む41羽のアカゲラ(great spotted woodpecker)です.

このことは,仲間を見分けるアカゲラ同士のみならず,保全生物学者(conservation biologist)にとっても役に立ちそうです.録音からそれぞれの鳥を識別できるため,ある地域に何羽の鳥が存在するか,などがわかるからです.

ところで,最後のクリストファーの洒落,お分かりになりましたか?
























解答 彼は「The birds' head-banging could thus do away with that research headache.  」(この鳥が激しく頭を振って(音を出す)ことが,研究者の(あの)悩みの種を取り去ってくれる)と言っていました. 

さらに詳しい説明

「キツツキの出す音を利用すると研究者はこれまで頭を悩ませていたこと(この地域に何羽の鳥がいるか?など)が解決できる」というのが本来の意味ですが,head-bangingには「激しく頭を振る」という意味のほかにも,「頭を強く打ちつける」という意味があり,また headacheはもちろん「頭痛」という意味なので,この文章は,「鳥が頭を強く打ちつけると,研究者の頭痛がなくなる」という意味にも解釈できるところが,言葉遊びになっているわけですね.

2018年2月9日金曜日

山火事の煙がブドウ畑に流れ込み,ブドウに触れると何が起こるかご存知ですか?...ケミストリーのお好きな方に

昨年は北米(カリフォルニア)が,今年は南米(チリ)のワイナリーが山火事で焼け落ちました.

でも山火事による被害はそれだけではないのです.

木が燃えるときに発生する煙.それがブドウに触れると,様々なことが生じ,そのブドウから造られるワインは傷物になってしまうことがわかりました.

さてここで質問です.様々なこと,とは何?

次の文の中から正しいものを選んでください.

1)煙の中の揮発性化合物がブドウの果実の中に取り込まれ,煙化合物によってブドウの味が悪くなる.
2)煙の中の揮発性化合物がブドウの果実の中に取り込まれるが,そのブドウを食べても味や匂いは変わらない.
3)煙に触れたブドウから取れたジュースには味の変化がないが,そのジュースを発酵させると,煙化合物の匂いや味が再びよみがえる.

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答え 正しいのは2)と 3)でした.

煙の中の揮発性化合物はブドウに触れるとすぐに果実の中に取り込まれますが,ブドウ中の砂糖分子がこの煙の化合物に結合し,水溶性で無害なものに変えるので,匂いや味は変化しません.しかしこのジュースを酵母で発酵させると,酵素の作用で砂糖と化合物の結合が切れ,煙の化合物が分離するため,匂いや味が蘇るのです.



2018年2月8日木曜日

大きな銀河の周りを回っている小さな銀河たち(ビデオ)

宇宙に存在する無数の小さな銀河たちは,より大きな銀河の周りを回っています.

我々の天の川も少なくとも数十の小さな銀河に取り巻かれていますが,現在の理論(シミュレーション)では,これらはランダムに動いているはずでした.

ところが,新しい研究によれば,一連のベビー銀河は,より大きな銀河の周りをまるで回転木馬のように規則的に回っていることがわかったのです.

地球からおよそ1200万光年離れているケンタウルス座Aを取り巻く小さな銀河たちは,ランダムではなく,平面の軌跡を描いて回転しているという発見がこのほどサイエンス誌に報告されました.

さらに,これらの銀河のほとんどは,同じ方向に動いていることもわかったのです.

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2018年2月7日水曜日

シャチ(オルカ)のしゃべる英語,聞き取れますか?

シャチ(killer whale)またの名をオルカ(orca)はイルカ(dolphin)やベルーガ(beluga)と同様に様々な音(声)を出す海の生物です.

ところでシャチにはユニークな方言が群れごとに存在しています.

ということは,シャチには他の個体(例えば母親)の真似をして「新しい音」を学ぶ能力が備わっているはずです.

それを確認するために,このほどこんな実験が行われました.

1頭のシャチ(名前はウィキー)に他のシャチが発する新しい音(声)を聞かせ,真似させてみる.

さらにウィキーのトレーナーたちは彼らの話す英語もウィキーに真似させてみたのでした.

60-Second Scienceに録音されている,シャチの音(声)を聞く

私たち人間は声帯を使って声を出しますが,シャチが鼻腔から音(声)を出すことを考えると,ウィキーの英語はかなり上出来と言えそうです.

オリジナルの音声とウィキーが真似した音声を技術的に音響分析したところ,確かにウィキーはしっかりと真似をしていることがわかりました.

さて,この研究の目的はシャチが上手に英語を話すようになることではありません.
研究者らが注目しているのは,口頭言語(vocal language)の一つの側面である音声模倣(vocal imitation)の能力なのです.

模倣する能力があれば,文化を伝えていくことができます...

そして,シャチの群にそれぞれ存在するユニークなレパートリー(シャチの方言)も保存されていくのです.



2018年2月6日火曜日

磁力でコントロールするユニークなマイクロロボット(ビデオ)

薄くて柔らかく小さな(長さ4mm!)ゴム片のように見えるこれは,新型のロボット.

フレキシブルな素材に磁性粒子を埋め込んで作ったものです.

磁石によって,歩いたり,転がったり,ジャンプしたり,水中を泳いだりできるのです.

さらに小さなものを運んだりもできれば,ロボット本体にポケットを作り,その中に薬などをしまいこむこともできます.

将来の用途としては,私たちの体内で(例えば胃の中で)使うことが期待されますが,そのためにはさらなる小型化の必要がありそうです.

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2018年2月5日月曜日

きらめく小さなお星様,あなたは一体だあれ?Twinkle, Twinkle, Little Star, How I Wonder What You Are...

夜空に輝く美しい星....が新しく生まれる?!

1週間ほど前にニュージーランドから「人類の星」(Humanity Star)と名付けられた人工衛星が打ち上げられました.

直径約1mの光り輝く球(正確には多面体)はカーボンファイバー製の65枚の反射板からできていて,高速で回転しながら,太陽からの光を地球に向けて反射します.

およそ90分で地球の周りを1周するこの球体は,地球上のどこからでも肉眼で目にすることのできる「お星様」となるのです.

ただしこの人工衛星は9か月後には地球の引力により,軌道から外れて消えていきます.

一見素敵な楽しい考えのように見えるけれど,人工的な光の氾濫が動植物に影響を与えている今,侵食されている自然のリズムがさらに破壊されるのでは,と考える人もいるようです.

英文の記事を読む 

2018年2月4日日曜日

お腹を空かせたホッキョクグマの話(ビデオ)

ホッキョクグマたちは氷のおかげで餌のアザラシを見つけることができるのですが,

気候変動で氷が溶けるにつれ,アザラシを探すのが大変となり,

その結果,健康に被害が生じているという研究結果がサイエンス誌に発表されました.

3年にわたり9頭のメスのホッキョクグマについて,血液検査などから代謝を測定したところ,これまで思われていた以上にホッキョクグマの代謝率が高いことがわかったのです.

さて,ここで質問です.

氷上で生活するホッキョクグマは1日に何カロリー以上食べる必要があるのでしょうか?

1)6,000カロリー, 2)12,000カロリー 3)20,000カロリー

ビデオを見る


さらに,GPSの機能のある首輪を利用して彼女らが餌を探す行動を調べたところ10日間の調査中,1/4の時間は餌を探して歩いていたことがわかりました.

その間にアザラシを見つけることができたクマは体重を維持できましたが,半数以上のクマは体重が減った(4頭の場合はなんと10%以上も体重が減った)のです.

このまま海氷がなくなっていけば,クマは餌から得られる以上のエネルギーを餌を探すことに費やすことになってしまいそうです.


























解答)2の12,000カロリー


2018年2月3日土曜日

ダニ,この厄介なものー大型野生動物とダニと人間との関係について

ダニ.この厄介なもの.これに噛まれるとただかゆいだけではありません.

ダニが媒介する病気の中には,ライム病(Lyme disease)やロッキー山発疹熱(Rocky Mountain spotted fever),野兎病(tularemia)Q熱(Q fever)さらには脳炎(encephalitis)まで,実に多くの病気が含まれており,治療をせずに放っておくと,死に至ることもあるのです.

さてこのほどケニアで行われた調査によれば,大型の野生動物がいない地区で,ダニの数が大きく増加(370%!)していることがわかりました.

当初研究者らはこの結果に驚きました.ダニは大型の動物を好むので,大型の動物がいなくなれば,ダニの数も減るだろうと予想されたからです.

詳しく見ていくと,ダニは大型の動物にたどり着く前にまずネズミなどの齧歯動物(rodent)に取り付きます.大型の動物がいないので,数が増えた齧歯動物とともにダニの数も増加.

ここからが問題です.大型の動物がいない地域でダニが次に狙うのは誰か?
そう,私たち人間.

大型の野生動物がいない地域では,私たち人間がダニに襲われるリスクが高まっていることがわかったのです.

ケニヤと同様のことが他の地域にも当てはまるのかどうか,研究者らは現在カリフォルニアで調査を行っているということです.

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2018年2月2日金曜日

アフリカの野生動物(ビデオ):ライオン,チーター,シマウマなど

今日ご紹介するビデオはアフリカの野生動物の姿.

とっても美しいけれど,ちょっと残酷な狩りの様子です.

生きていくためにライオンやチーターはシマウマやインパラを追いかけ,仕留めます.

このほど研究者らは,狩りの様子を詳しく調べました.ライオンやチーターなどの捕食者(predator)は力とスピードで獲物(prey)を上回っています.が,戦略(strategy)という点に関しては,インパラたちが有利なのかもしれません.

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2018年2月1日木曜日

ハダカデバネズミをご存知ですか?

今日はサイエンスの記事のご紹介です.

ハダカデバネズミ(naked mole rat)は,滅多にガンになることがなく,ある種の痛みに耐性があり,無酸素状態でも18分生存することが可能なスーパーモデル動物です.

ところで,このほど発表された論文によれば,彼らはなんと老化しないようなのです.

というのも哺乳動物は年齢を重ねるにつれ死亡リスクが高まるのですが(例えば私たち人間の場合,30歳を超えると8年ごとに死亡率は2倍に増える!)ハダカデバネズミの場合,年を取ってもリスクは増加せず(むしろやや減少しているようにさえ見え)これまでに記録に残っているどんな哺乳類よりも彼らの死亡率は低かったのでした.

ただ彼らが年を取らない,というのは不正確で,年を取り始めるのがとても遅い(そして歳を取り始めると老化が急速に進む)ということなのかもしれない,と老人学の研究者は語っています.

SIENCEの記事を読む


いずれにせよ,ハダカデバネズミの研究は老化の秘密を探る上で重要なヒントを提供してくれそうですね!