2019年1月20日日曜日

ブン ブン ブン 蜂が飛ぶ,蜜は ルン ルン ルン 甘くなる

ミツバチの羽音を聞いた花の蜜が甘くなる...

最近の研究で,ミツバチが近くにいることを知って,蜜をさらに甘くする花の存在が報告されました.

さて,多くの生物は「音」を利用して生き延びてきました.

狼の遠吠えが聞こえると,ウサギは逃げる.
雷が落ちた音が遠くで聞こえると,鹿は避難場所を探す.
鳥は歌を歌って,恋人を探す.

だから当然植物だって音を利用しているのでは?という素朴な疑問がこの研究の根底にありました.

考えてみれば,音というのは波なので,振動を受信できるなら,必ずしも哺乳類の耳のように「骨」や「毛」が組み合わさった複雑な器官がなくても音は感知できます.

そこで beach evening primrose(マツヨイ草)を,無音の状態,低周波,中周波,高周波の音,と蜂の羽音にさらした状態に置き,それぞれ,花の蜜に含まれる糖分の量を調べたのです.

マツヨイ草
すると,3分ほど蜂の羽音や低周波にさらすと,無音,中周波,高周波の時と比べ花の蜜に含まれる糖分量は12から20%へと増加したのでした.

つまり「蜂が近づいてくるのを聞いた」花は,その蜜を甘くしたのです.

この研究の論文は査読前の原稿として(preprint service),インターネット上で読むことができます.

論文を読む
 
今回の記事はSmithsonian.comSMARTNEWSからのご紹介です.

英文記事を読む

単語
cochlea (内耳の)蝸牛
ubiquitous いたるところに存在する

花がミツバチの羽音を聞いて,蜜を甘くするとは....

最近植物の持つ知られざる力についての研究が盛んです.

これまでに,本ブログでもトマトに関する面白い研究をご紹介しています.

2018年5月のブログ トマトには嗅覚があるのか?
2017年9月のブログ イモムシの共食いと病気とトマトの関係

2019年1月16日水曜日

光るマウスを作る?いえいえ真面目な遺伝子治療のお話.

今日ご紹介する60-second scienceは現在研究されている新しい遺伝子治療法についてなのですが,Christopher Intagliataさんの前振りがすごくオシャレ!

曰く,

私たちのゲノムは図書館(で借り出した本)のようなもの.
遺伝子はタンパク質を作るトリセツ.
本当の図書館と違うのは,私たちの本(ゲノム)を返却し,別のを借りることができないこと.

ところが,遺伝子治療により,この本をいわば改定することが,つまり新しいタンパク質を作り出すことが,できるようになった.

現在マウスを用いた試験が行われていますが,ホタルの発光酵素ルシフェラーゼを作る情報を載せたmRNAを使ったところ,このmRNAを吸い込んだマウスの肺が光りだした(ルシフェラーゼが作り出された)のでした.

もちろんこの実験の目的は,光るマウスを作ることではなく,cystic fibrosis(嚢胞性線維症)の患者(遺伝子変異により肺に粘り気の強い液(痰)がたまる病気)のための治療法として役立てることなのです.すでに臨床試験が始まっています.

さて,今回のポッドキャスト,最後の言葉あそびはお分かりになりましたか?
(解答はこの下に)

60-Second Scienceを聞く


















解答:Intagliataさんはポッドキャストを「inhalation genetic therapy could be an inspiration.」(吸入遺伝子治療は素晴らしい思いつきと言えるだろう)という表現で締めくくっていましたが,このinspirationには「素晴らしい思いつき」という意味のほかに「吸気」という意味があるのですね.




2019年1月13日日曜日

戦争で怪我をしたら,ウジムシを使って治そう,というお話

本日配信されたLiveEssentialsにはびっくりする記事が載っていました.

アメリカ合衆国は戦闘による怪我人を治療するために,近々「ウジムシ」を使用する予定だというのです.

ウジムシが送られる先は,シリア,イエメン,南スーダンなど.

怪我人の患部に乗せられたヒロズキンバエ(green bottle blowfly)の幼虫たちはすぐに仕事に取り掛かります.死んだ皮膚を食べ,殺菌性のある唾液を振りまいて,傷口を感染から守るのです.

奇妙な治療法に思えますが,実は,昔オーストラリアのアボリジニの人々も傷口の治療にウジムシを用いていました.また第一次世界大戦では,兵士たちも利用していた治療法だったのです.

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