2017年8月7日月曜日

アマゾンに降る雨はどこから来るのか?

すでに長いこと科学者たちは,アマゾンでは「季節風が海から湿った空気を運んでくる2,3か月も前から雨が降り出す」奇妙な事実があることに気がついていました.

今回ようやくその謎が解けました.アマゾンに降る雨の元は熱帯雨林そのものだったのです.

これまでもアマゾン上空に水分が溜まっていることはわかっていたのですが,なぜなのか,どこから来たのかがはっきりしていませんでした.

気象衛星のデータから水分の増加の時期と熱帯雨林の緑が濃くなる(新しい葉が生まれる)時期が一致していることがわかり,そこからこの水分は熱帯雨林が蒸散(transpiration)により,葉の裏から放出したものではないかと,という仮説が生まれました.

NASAの地球観測衛星,オーラを使ってアマゾン上空の水蒸気を観測したところ,海から昇る水蒸気と植物が空気中に放出する水蒸気では重さに違いがあることがわかりました.

海からの水蒸気は軽い.何故なら,蒸発する時に,重水素(水素の同位体.プロトン1個とニュートロン1個が含まれるため,水素よりも重い)を含む水分子が海水中に残される傾向があるため.

一方,植物からの水蒸気はそれよりも重いのです.植物は,土壌から水を吸い上げ,光合成を行い,蒸散によりそのまま水分を空気中に戻すため,同位体の組成には何の変化も生じないからです.

オーラのデータからアマゾン上空の水分は海から蒸発したと考えるには重水素の含有量が高すぎること,さらに,アマゾンの乾季が終わる(緑が濃くなり,光合成が最も強力に行われる)時に,重水素の含有量がピークに達することがわかりました.

アマゾンが作り出す雨雲が雨を降らせ,この雨が大気を温めると,上昇気流が生まれて,空気循環が起こります.それが引き金になって,風のパターンがシフトし,さらに海洋からの水分がアマゾンに呼び込まれると考えられるのです.熱帯雨林の木々が吐き出す水蒸気が,アマゾンの気候にドミノ倒しのような影響を及ぼしているのかもしれません.

本研究はProceedings of the National Academy of Sciencesに発表されたものです.

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